2014年11月3日星期一
【ザ・アンパイア】 19歳でプロデビューしたエリート審判員 白井
【ザ・アンパイア】 19歳でプロデビューしたエリート審判員 白井
2000年8月8日、倉敷で行われたオリックス対ロッテの18回戦。この日、記念すべき自身初の一軍戦審判デビューを飾った当時22歳の白井一行は、「先輩の審判員たちに良いところを見せてやる」と、意気込んで試合に臨んだ。
その熱意が、思わぬトラブルを引き起こした。
「三塁塁審としてボークを宣告しました。すると故・仰木彬監督がベンチから出てきて、僕ではなく、その試合の責任審判の二塁塁審の元に歩いて行かれたんです。正直、『やってしまったか……』と思いました」。
この日が白井にとっての初ジャッジだったことを、故・仰木監督は事前に聞いていたのだろう。白井はデビュー戦にして「もうこの世界でやっていけないのではないか」と、顔面蒼白になったという。
まさに悪夢の一軍デビュー戦だった。しかし、あの長嶋茂雄氏でさえもプロ初出場の試合は4打席4三振だった。冷や汗のデビュー戦を経た白井はその後、審判界で順調に歩みを進めてきた。
高校時代、野球部の補欠だった白井は、市内の大会で塁審を務めていた。高校を卒業する時、高校野球連盟から審判のオファーを受け、審判という職業があることをはじめて意識した。当時の監督から「やるならプロを目指しなさい」という言葉を受け、プロ野球の審判を志した。
専門学校に入学した1年目の11月、白井は早くも監督の言葉に応えた。パ・リーグの審判試験を推薦で受け、合格したのだ。白井は19歳にして、プロ野球審判員となった。
2013年までの一軍戦出場数は779試合。2007年には栄えあるオールスターゲームの球審も務めた。球場全体によく響く高い声と端正なマスクが印象的で、インターネット上には白井のファンコミュニティが作られているほどだ。
もっとも「ネットは見ません」と白井。「正しいジャッジをして当たり前、間違えたらあれこれと厳しい指摘を受ける仕事ですから」。
白井が球審を務める上で心掛けているのが、ジャッジを急ぎすぎないことだという。「緊張すると、早くコールしたいという気持ちが強くなってしまう。そうすると、ボールがキャッチャーミットに収まる手前でストライク、ボールを判断してしまうんです。一流投手の変化球は、そこから変化してくる。だから、敢えてひと呼吸置いてコールするように心がけています」。
何の因果か、それとも偶然か、白井には微妙なプレーの判定が多く巡ってくる。プロの審判員としては中堅に差しかかる36歳でありながら「退場を宣告した回数は、おそらく1、2を争うかもしれません」と、自ら語った。
そのフレーズだけ聞けば、攻撃的で気性が荒い人物を想像するかもしれない。しかし、白井の人柄はまるでその逆だ。穏やかな口調と柔らかな表情からは、選手や監督たちと激しく口論する姿はとても想像できない。
プロ野球で見られる“退場”について、白井はちょっとしたタネ明かしをしてくれた。2013年5月25日、甲子園で行われた日本ハム対阪神戦。打席に立っていた阪神・浅井良選手の内角をかすめた投球に対し、球審の白井は死球を宣告した。その直後、一塁に走っていこうとする浅井が白井にほんの一瞬だけ見せた「いいんですか?」という表情から、白井はボールが当たっていないことを悟った。
三塁ベンチからは、日本ハムの栗山英樹監督が抗議に出てきた。しかし自らが一度下したジャッジは変えられない。激しい抗議と暴言を受けた白井は、栗山監督に対して退場を宣告した。
この場面について、白井はこう振り返った。
「栗山監督には、栗山監督の立場がある。あそこまで猛烈に抗議をされて、途中で引き下がっては格好がつかない。同じように審判員にも立場があって、たとえ判定を間違えたとしてもジャッジは変えられない。だから栗山監督の立場を尊重して、退場を宣告しました」。
翌日、栗山監督と会っても両者が険悪になることはなく、普段通りに挨拶を交わしたという。あの場面は、退場を覚悟で飛び出した栗山監督と、退場宣告を出さざるを得なかった審判の立場を、お互いプロフェッショナル同士、分かり合っていたのだ。抗議のシーンで「阿吽の呼吸」という表現はいささかミスマッチに聞こえるが、引くに引けない栗山監督の立場を重んじた白井が、栗山監督に退場を宣告することで、その場を収めたのだ。
春から秋まで、全国の球場を日々の仕事場にしている白井だが、プライベートでも球場に足を運ぶことがあるという。白井は自他共に認める、AKBの大ファンなのだ。「昨年はシーズン中の休みを利用して、コンサートに4回行きました。推しメンですか?大島優子です。卒業を発表しちゃいましたけどね(笑)」
心身共にタフな仕事を続ける中で、AKBのライブが何よりのリフレッシュになるという。そして驚くべきことに、AKBから得たインスピレーションを、白井は仕事にも活かしているという。「昨年は、ストライクをコールするとき指で"K"の文字を作っていたんですよ。大島優子が「チームK」のメンバーだったのがヒントなんですが、スコアブック表記では、三振は「K」と表しますから(笑)」。
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